我が国の国際競争力の確保や地域経済の発展等のための社会資本である港湾の施設整備に際して、良質な品質と工事の安全の確保は最重要の課題となっています。
基幹技能者制度は、我が国の建設産業が次のような状況の下で、平成7年4月に策定された「建設産業政策大綱」を踏まえ、戦略的推進事業の一環として制度化されたものです。
① 労働生産性の向上、品質、安全が確保された建設施工の要請
② 直接施工を行う事業者の現場での作業管理の重要性の増大
③ 建設業に対する魅力の確保-労働者の処遇の改善の必要性-
④ 建設技能労働者の長期的不足等の直面する課題の解決の必要性
更に、生産性の向上や建設コスト縮減といった近年の建設産業の課題に応えるため、平成20年1月31日に、建設業法施行規則(省令)が一部改正され、新たに「登録基幹技能者講習」を行う者の登録業務を国土交通大臣が行うこととなったところです。
(一社)日本海上起重技術協会は、海上工事における技術と技能を備えたレベルの高い船長等を「登録海上起重基幹技能者」として位置付けるべく、平成20年9月国土交通大臣の登録認可を得て、「登録海上起重基幹技能者」講習実施機関となりました。「登録海上起重基幹技能者」とは、作業船を使用して実施する海上工事に関し、主任技術者に対して、適切な施工方法を提案・調整する他、効率的な作業方法・作業手順を構成して作業船乗組員の作業を指揮・監督する者で、それによって生産性の高い、安全で高品質な建設生産の実現に寄与するものです。
「港湾工事等海上起重作業船団長配置要領」(国土交通省港湾局制定)が平成25年3月に改正され、船団長の配置において「作業船団長には、10年以上の乗船実務経験と3年以上の指揮・監督経験を有する者、もしくはこれと同等以上の能力を有する者として監督職員の承諾を得た者を配置するものとする。なお、建設業法施行規則に基づく登録海上起重基幹技能者につては、上記実務経験を有する者とみなす。」とされました。
講習実施機関により「基幹技能者」に登録されると、建設業法第27条の23第3項の経営事項審査のZ評点(技術力評価)の中で基幹技能者1人に対して一律3点が加算されることとなっています。
また、平成29年11月10日に建設業法施行規則(省令)が一部改正され、土木一般、建築一般以外のいわゆる専門工事業の登録基幹技能者に対して主任技術者の要件を満たす者として認められることになりました。平成30年4月1日より、登録海上起重基幹技能者においては、しゅんせつ工事業で資格を取得した者が主任技術者の要件を満たす者として認められました。
(1)登録海上起重基幹技能者講習制度の目的
登録海上起重基幹技能者講習制度は、登録海上起重基幹技能者として具備すべき海上工事作業に必要な知識を網羅し、受講者の技術と安全の向上を図り、登録海上起重基幹技能者に相応しい海上作業従事者を確保することを目的とします。
(2)登録海上起重基幹技能者講習制度の性格
上記の目的を達成するため、(一社)日本海上起重技術協会では国土交通大臣の認可を得、講習実施機関となって「登録海上起重基幹技能者」に関する講習制度を設け、登録海上起重基幹技能者講習を行うものです。
(3)登録海上起重基幹技能者講習制度の受講資格
海上工事に従事し、当該作業船団の船団長等として的確に作業管理及び指揮・監督が行える能力を有している者として「登録海上起重基幹技能者」の資格が与えられます。このため、受講対象者としては、港湾土木又はしゅんせつのいずれかで10年以上の海上工事の実務経験と3年以上の職長(指揮・監督者)経験を有する者としています。
(4)資格の名称
登録海上起重基幹技能者講習を修了した後、登録海上起重基幹技能者試験に合格し、登録されて者を「登録海上起重基幹技能者」と称します。
(5)「登録海上起重基幹技能者」の認定、登録、有効期限及び更新
「登録海上起重基幹技能者」には、「登録海上起重基幹技能者講習修了証」を交付し、登録原簿に登録し保存します。
「登録海上起重基幹技能者講習修了証」は、登録原簿に登録した日から5年が有効期です。
登録海上起重基幹技能者の更新については、当協会が実施する登録海上起重基幹技能者更新講習を受講し、試験に合格した者は「登録海上起重基幹技能者講習修了証」の更新を受けることになります。